CVTがEVを高効率化させるメカニズム
CVTはモーターからの回転力を無段階で変換することができるトランスミッションの一種です。ギヤを自転車のように段々で変化させるのではなく、無段で動かしている点がCVTの最大の特徴です。
CVTを搭載することで変速比を連続的に変化することができるため、モーターの回転数を常に最適な状態に保つことができます。そのため、EVの高効率化や加速性能、登坂性能、積載力の向上など、多くのメリットを持っています。
電費が5%向上
当社では、市販のCVT電動バイクを用い、1台はCVTのままに、もう1台はトランスミッション部を速比固定に組み換えることで、駆動力の比較を実施しました。詳しい比較データは下記のリンクより、資料をダウンロードください。
また、駆動力のほか電費の測定を実施しました。世界統一基準であるWMTCモードで電費を測定した結果、CVTを搭載することで概ね5%良化することがわかりました。
※WMTCモード:燃費(電費)評価を行うための走行モード(車速指令)。国連自動車基準調和世界フォーラムにて作成された世界統一基準。

CVTの構造
CVTは「ウエイトローラ」というローラが入ったプーリと伝動ベルトの組み合わせにより構成されています。どのように無段変速が実現しているのか説明します。

図1は、上段が真横から見た図で、下段がそれぞれの断面の図解になります。 駆動側はウエイトローラと可動のシーブと固定のシーブ、従動側は可動のシーブと固定のシーブと圧縮バネで構成されています。図1は低速回転時を表しており、駆動側よりも従動側のベルトが巻きついている径が大きくなっています。このときウエイトローラは中心軸側にあります。これにより、駆動側と比較すると従動側は、回転数が減りトルクが増えるのです。

図2は中速回転時を表しています。低速から中速へ回転速度が増すことで、駆動側にあるウエイトローラの遠心力が、従動側にある圧縮バネの力に勝つと、ウエイトローラが径方向外側へ移動します。これにより駆動側の可動シーブが断面図において下方向に動き、駆動側のベルトの巻き径が大きくなります。それに伴い、従動側の巻き径は小さくなります。低速時と比較すると従動側の回転数は上がり、トルクは低くなります。

図3は高速回転時を表しています。高速回転時は中速回転時よりもさらにウエイトローラの遠心力が増すので、駆動側のベルトの巻き径がさらに大きくなります。従って、従動側は中速回転時よりも高回転、低トルクになります。
このように、CVTではベルトの巻き径をウエイトローラで変化させることによって、スムーズな変速を可能にしています。
また、CVTにはバイクから乗用車に使用されるベルト式CVTと、大型乗用車で使用されるトロイダル式CVTに分けることが出来ます。さらに、ベルト式は金属ベルトとゴムベルトの2種類に分けられ、二輪車・三輪車用にはゴムベルトが乗用車には金属ベルトが用いられます。
バンドー化学のCVT用ゴムベルト
内燃機関向けCVTベルトにおける豊富な実績
ゴムベルトには自動車のファンベルトなどにも使用される摩擦ベルト、自動車のOHCや精密部品などに使用される歯付ベルトの2つの種類があります。
・摩擦ベルト ・ ・ ・ 自動車用ファンベルトなど
・歯付ベルト ・ ・ ・ OHC、精密機械など
ゴムベルトが使用されるのは、二輪車、三輪車用のベルト式CVTです。内燃機関を搭載した二輪車で搭載されているCVTでは、当社の摩擦ベルトを多く採用いただいています。
CVTに使用される摩擦ベルトには、シングルコグ、ダブルコグ、ミニダブルコグがあります。出力(排気量)によって使用するベルトは異なっており、使用事例は以下の通りです。
・シングルコグ ・ ・ ・ 50cc~150ccクラスのスクーター
・ダブルコグ ・ ・ ・ 250ccクラス以上のATV/UTV、スノーモービル、ビッグスクーター
・ミニダブルコグ ・ ・ ・ 125ccクラス
このように内燃機関のCVT用ベルトで豊富な実績を有していることから、EV向けのCVTにおいても経験を生かした最適なベルト設計が可能です。

世界初!セルロースナノファイバー複合化ゴムを適用した高負荷対応ベルト
当社は、セルロースナノファイバー(CNF)複合化ゴムを適用したダブルコグベルトを伝動ベルトとして世界で初めて開発・販売しました。このCNF複合化ゴムを採用したベルトは次世代のCVT用摩擦ベルトに求められる高弾性領域に対応しており、ベルトの基本性能である伝動能力、耐セパレーション性、耐摩耗性、耐クラック性に優れています。
下のグラフは現行のベルトとセルロースナノファイバーを含んだベルトを比較した図になります。現行のベルトに比べるとセルロースナノファイバーを含んだベルトは伝達能力が約1.7倍に向上したことが分かります。
CVTのベルトは高弾性になるほど、ベルトの耐久性と伝動容量が良化します。それによってベルトがサイズダウンできるため、CVTユニットもコンパクトにできるという大きなメリットがあります。

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