なぜ歯付ベルトの品種を正しく選ぶ必要があるのか
産業機械における歯付ベルトにはさまざまな品種があり、さらにそれぞれで多種多様な材質が存在します。選定した歯付ベルトが機械の使用条件や環境条件に合わない場合、歯付ベルトの本来の性能を発揮できないばかりか、早期破損といったトラブルにも繋がりかねません。したがって、用途や要求品質に応じて適切なベルトを選定することが非常に重要となってきます。また、選定する品種によってはベルト幅を狭くでき、よりコンパクトな機械設計が可能になる等、歯付ベルト選定のポイントを押さえることで製品設計の選択肢を広げることもできます。
そこで本記事では、まず歯付ベルトの材質である「ゴム」と「ポリウレタン」の基本的な特徴・性能やそれぞれの優位性を解説し、歯付ベルトの選定方法をご紹介します。
歯付ベルトにおける「ゴム」と「ポリウレタン」の基本的な特徴・性能
歯付ベルトの材質は大きく分けて「ゴム」と「ポリウレタン」の2種類があるため、歯付ベルトを選定する際に「ゴムとポリウレタン、どちらを選べばよいのか?」というご質問を多く頂きます。ゴムとポリウレタンにはそれぞれ長所短所があるため、選定する際は複合的な観点から検討することとなります。
ゴムとポリウレタンの長所/短所
【ゴム落ち性(摩耗量)】
「ベルトを走行させた際にその程度摩耗するのか」を表しています。
ウレタンゴムはゴムに比べて摩耗しにくい材料特性があります。
ゴム落ちを避けたい環境(クリーンルームなど)にはウレタンベルトが向いています。
【静音性】
ゴムベルトはベルト歯の表面に帆布があるため、ウレタンゴムに比べて静音性に優れています。
【耐油性】
ウレタンゴムのほうが耐油性に優れています。一方、H-NBRなど、配合によっては耐油性をもつゴムもあります。
【耐熱性】
ゴムは耐熱性が高く、仕様によっては120℃まで使用可能です。
上記のように、どのような性能をベルトに求めるのかによって、ベルトに使用すべき材質が変わってきます。ただし、上記表はもっとも一般的なゴムの種類であるクロロプレンゴムとウレタンゴムを比較した表となっていますが、配合によっては、たとえばゴムでも耐油性を持つ材質や、加水分解しにくいウレタンゴムもあります。次の項ではゴムとポリウレタンそれぞれの種類について説明します。
ゴムの種類と特徴
【CR:クロロプレンゴム】
使用可能な温度領域が広く、ゴム物性にも優れているため汎用性が高い。
自己消炎作用がある。
【EPM/EPDM:エチレンプロピレンゴム】
耐熱性・耐寒性・耐オゾン性など、耐候性が高い。
他のゴムと比べて摩耗しやすく、耐油性は低い。
【NBR:ニトリルブタジエンゴム】
昨今は後述のH-NBRのほうが主流となってきている。CRに比べて更に耐油性に優れる。
FDA準拠配合や白色配合なども可能。
【H-NBR:水素添加ニトリルブタジエンゴム】
自動車用エンジンの歯付ベルトによく使用される。
耐熱性、耐油性に優れるが、他のゴムと比べて耐寒性、耐オゾン性は劣る。
ポリウレタンの種類と特徴
ポリウレタンとは、ウレタン結合を有する高分子化合物の総称です。
ポリウレタンの多くは、分子構造にエステル基をもつ「エステル系」と、エーテル基をもつ「エーテル系」に分類されます。
【エステル系】
エステル基の相互作用が強いため、材質としての強度が高い。
ただし、エステル基が加水分解しやすいためポリエステル系ポリウレタンも加水分解しやすい。
【エーテル系】
エ-テル基の相互作用が弱いので強度は低いが、低温でも柔軟。
エ-テル基は加水分解しにくいため、ポリエ-テル系ポリウレタンも加水分解しにくい。
当社のウレタン製シンクロベルトはエーテル系のポリウレタンを使用しております。
産業用伝動ベルト製品検索を活用する方法
ここまで歯付ベルトに使用される材質の特徴について説明してきました。しかしながら、上記で述べた特性だけでなく、使用する機械の負荷やベルト速度なども考慮した上で品種を選定する必要があります。
そこで、おすすめの方法が「産業用伝動ベルト製品検索」を活用する方法です。ブラウザ上で簡単に、要求特性や機械特性を満足している品種を絞り込むことができます。
「産業用伝動ベルト製品検索」に必要な情報
「産業用伝動ベルト製品検索」に必要な情報は以下の3つのみです。
・駆動プーリの外径ピッチ径
・回転数
・使用条件(必要に応じて)
「産業用伝動ベルト製品検索」の操作方法
①まず伝動方式を選択します。(今回の場合は「噛み合い伝動」)
②駆動プーリの外径ピッチ径と回転数を入力します(ベルト速度は自動計算されます)
③耐油性や難燃性などの要求特性がある場合は「使用条件」をクリックし、必要な特性にちェックを入れてください。
④「この条件で検索」をクリック
⑤条件に合った品種が一覧で表示されます
ベルトの品種を絞り込んだあとは、より詳細にベルトのサイズや幅を計算する必要があります。その際は「ベルト設計・選定サポートプログラム」を是非ご活用ください。
当社製品体系
最後に、当社歯付ベルトの製品体系をご紹介します。バンドー化学では、様々な要求特性に応じたラインナップを取り揃えております。歯付ベルトの選定にお悩みの際はぜひ当社に気軽にご相談ください。